【USER VOICE】宮原 光興 先生(悠翔会在宅クリニック川崎 医師)

在宅での嚥下機能検査は、生活の一部を切り取って検査できるので、その強みを感じ導入しました。

2016年7月8日

水野先生宮原 光興 先生(悠翔会在宅クリニック川崎 医師)

プロフィール:
2006年 東京医科大学医学部医学科卒業
恩賜財団済生会 東京都済生会中央病院 初期臨床研修
東京警察病院外科 後期研修
東京医科大学外科学第三講座入局
東京医科大学病院 消化器外科・小児外科
厚生中央病院 消化器病センター
戸田中央総合病院 外科
2014年~ 医療法人社団悠翔会 入職
2015年1月~ 同法人理事・悠翔会在宅クリニック川崎院長

1.なぜ在宅医療に携わるようになったのですか?

僕はずっと外科で癌を切るような仕事をしていました。そのあとの、患者さんが自宅に帰ってからのイメージが全然わかなかったんです。患者さんがおうちでどう過ごしているのか、生で見たかったというのが理由の1つです。

もう1つは、亡くなった祖母が、最期を自宅で過ごしたんです。訪問診療は入りませんでしたが、今の知識や制度に対しての理解があれば、訪問診療を入れるべきだったと思っています。そういうこともあり、在宅医療に興味を持ちました。

2.川崎区の地域特性について教えてください。

川崎区は、病院過剰で病床が余っているんです。非常に珍しいと思いますが、そのような経緯もあり、在宅医療が東京ほど充実しているとはまだまだ言えません。お家で過ごしたい人が、結果的にお家で過ごしていない、あるいは、おうちで過ごすということに対しての認識が少し低い、というところがあります。

あとは独居の高齢者が多いですね。神奈川県は高齢人口の増加率が高く、川崎エリアも人口の増加率に比して世帯数が増えているので、つまり独居率が高くなっているということです。家族のサポートが得にくい方も結構いらっしゃいます。

また川崎区は、生活水準が高くない方々もいらっしゃいます。介護保険などのサービスにうまく入っていけないような一人暮らしの高齢者もいますので、そういう方をいかにサポートしていくか、という課題があります。基本的には2週に1回の訪問診療ですけど、人によって全く違います。特に独居の方はその人を見る機会を増やすためにこまめに入ったりしますね。

3.在宅診療で実現したいこと

僕は、“今後ベッドが足りなくなって病院で死ねない時代が来るので、在宅医療が必要なんじゃないか”っていう論調を変えたいんですよね。在宅医療は、家に病院を持ってくるわけではないですし、ネガティブな理由で在宅医療を選んでほしくないという思いがあります。病院のベッドが空いてる、でも家だよって、その人の希望で在宅医療を選んでほしいと思います。

また、エビデンスとか、そういったものだけでは診たくないと思います。ナラティブだけでもダメで、患者さんに寄り添うだけだったら僕らの免許の意味がないので、バランスを取りながら一人一人の患者さんをしっかり診ていきたいなと思っています。

これはだいぶ前の話ですけど、必要だったら、患者さんとお酒を飲んだりもします。101歳のおじいちゃん。もちろんその人の家に行くのを診療の一番最後にして、そういうことをすることもあります。

4患者さんやご家族との関係を築くために心がけていることがあれば教えてください。

在宅って、病院と違ってヒントがいっぱいあるんです。例えば、おうちに行った時に、相撲の番組を見ていれば、相撲が好きなのかなというところから入れるし、昔のゴルフクラブが置いてあればゴルフ好きなのかなとか。何かのお免状や、誰かとの写真が飾ってあるとか。その人の生活やバックグラウンドが見えやすいですよね。そういうところから入って、受け入れてもらうようなことは考えています。

在宅診療はおうちにお邪魔するので、患者さんに受け入れてもらえるように、なるべく引き出しを多く持とうと思っています。僕はまだ若い方ですから、特にご高齢の方は、受け入れてもらえる時と、もらえない時がきっとあるだろうし。こんなことも知っているのかと思ってくれれば、そういったところから入っていけます。

(在宅での看取りについて新聞連載された)患者さんとはかなりしゃべりましたね。これは必要だと思って。1回に1時間くらいの診療時間を取って、でも1時間半だったりとか。かなり頑固でしたが、頑固の裏側にはちょっと弱いところがあったりするんです。
そういうところを見るのも大事だと思うんですよね。

嚥下内視鏡.jpg

5.スコープキューブ導入のきっかけ

僕は消化器外科が専門なので、胃瘻を作っているわけですが、やっぱり口から食べることが基本だと思っています。胃瘻を作ってからいかに食べてもらえるようになるか。そのための嚥下内視鏡検査を病院でやっていました。

ただ、病院での評価って、病院という場所、病院のイス、病院の机、病院の介助。特殊な環境だし、家で食べているご飯ではないですよね。家に帰ってから再現性があるかというと、僕はやっぱり疑問なんです。家で嚥下内視鏡検査ができれば、生活の一部を切り取って検査ができるので、その強みがすごくあると思って導入しました。

普段使っている食卓とイス、つまり姿勢ですよね。あとは普段食べているもの。僕が検査をやるときには、嚥下ジュレ、とろみをつけたお水、ヨーグルトとかに加えて、ご家族に患者さんの好きなものをひとつ用意してもらうこともあります。

6.スコープキューブはお役に立てていますか?

エアスコープもすごくいいと思いますが、有線だからといって困っていることはないです。そのままパソコンにデータを取り込めるのが、いいですよね。今はUSBでファイルの管理をしていて、撮った写真のうち1枚を僕らの電子カルテに保存しています。

胃瘻交換にも使えますし、僕は気管支鏡をやったりもしています。あと、咽頭がんの患者さんの観察をしたりとか。僕らが診る人はアーリーじゃないので、細かい病変を見つけようというのとは違いますから、基本的には診れます。僕はそういう使い方を日常的にして活用しています。

7.最後に、働き方について教えてください。

今でも、毎週火曜日は病院で、月に1回は実家の病院で、内視鏡検査や手術を行っています。僕は今のスタイルを気に入っていて、病院側から見るパターンと在宅から見るパターンと、両方から見られる位置にいて、視野を広げているかなと自分では感じています。
在宅クリニックって、医師が一人で頑張っているようなイメージがあるかもしれませんが、一人で24時間365日やるのはかなり大変です。エネルギーのある先生でも、例えば、その先生がインフルエンザになったらどうするの?とか。悠翔会は、法人として継続可能なシステムを作っていて、日中・夜間・週末にチームが分かれています。日中診療している医師は、日中しか診ません。
仕事のスタイルとしていいなとも思ったのも事実です。子どもと過ごす時間がほしい、というのもあったんですけどね。家族と過ごすことがいい仕事につながると思っています。

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※本インタビューはSC2015をご使用の際のインタビューです。